卵選びの参考に、アメリカの卵のグレードと種類と選び方
アメリカのスーパーマーケットの卵売り場は広く、オーガニック認証がついた卵からそうでないものまで、所狭しと卵が並んでいます。
その数の多さに、一度は戸惑ったことがある方が多いのではないでしょうか。
今回はアメリカで卵を買うときに参考になるような、アメリカの卵選びの基本情報のグレードやサイズのことから、オーガニックとそうでない卵の違い、餌や飼育環境の違いなど、アメリカの卵についてまとめました。
アメリカの卵基本のき、卵のグレードとサイズ
一般に流通しているアメリカの卵のパッケージに必ず記載されているのが、卵のグレードとサイズです。
アメリカの卵のグレードは3種類
アメリカの卵のパッケージに必ず書いてあるのが、アメリカの農務省(USDA)が定めるグレードです。
殻の外観、殻の状態、黄身の質、白身の質の総合評価で決まり、AA、A、Bとランク付けれます。
AA・・・白身が厚くしっかりしていて、黄身が高く丸く、殻がきれいで割れていない卵
A・・・白身が適度に硬いがAAほどではない。黄身と殻はAAと同じ
B・・・白身がグレードAより薄く、黄身は広く平ら。殻は割れていないが、汚れがあることもある。通常グレードBの卵は液卵、冷凍卵、乾燥卵の製造に使用されるので、店頭に並ぶことはない
アメリカの普通のスーパーマーケットで一般的なのはグレードAの卵。時々グレードAAを見かけますが、Aが断然多いです。
アメリカの卵のサイズは6種類
卵のグレードと共に必ずアメリカの卵のパッケージ書いているのが、卵のサイズです。
このサイズは卵1つ1つのの大きさを表すものではなく、1カートン12個の卵の重さを表しています。(だからアメリカの卵の大きさは同じ商品でもまちまち、なんてことがあるんですね。)
Peewee(ピーウィー) 15oz/425g per dozen
Small(スモール) 18oz/510g per dozen
Medium(ミディアム) 21oz/595g per dozen
Large(ラージ) 24oz/680g per dozen
Extra Large(エクストラ ラージ) 27oz/765g per dozen
Jumbo(ジャンボ) 30oz/850g per dozen
小さい卵は市場に出回ることはなく、一般的な大きさはラージ。アメリカのレシピで卵と言ったら、ラージを指します。
実際は意味がない「良さそうな卵」の販売促進用語
卵や肉製品のパッケージに記載されている体に良さそうな単語の中には、実際は販売促進のための用語で、消費者が想像するような意味を持たない、もしくは実質無意味な単語があります。
Natural、Farm Fresh
Natural(ナチュラル)と聞くと何となくいい商品のような気がしますが、Natural(ナチュラル)は消費者にできるだけいいイメージを持ってもらうためのマーケット用語で、実際は何の意味もありません。
同じく、Farm Fresh(ファームフレッシュ)にも意味はありません。
全てのたまごは自然な卵=Natural(ナチュラル)で、全ての卵は農場からのFarm Fresh(ファームフレッシュ)な卵です。
No hormone
卵のパッケージのNo hormone(ノーホルモン)の文字は、ニワトリにホルモン剤を投与していないという意味。
ですがアメリカでは、ニワトリへのホルモン剤の投与はすでに禁止されています。アメリカで販売されている全ての卵は、No hormone(ノーホルモン)の卵です。
No Antibiotics
卵のパッケージに書かれた、No Antibiotics(抗生物質不投与)の文字にもほとんど意味はありません。
アメリカでは原則ニワトリに抗生物質を投与してはならず、許されるのはニワトリは病気にかかり治療に抗生物質が必要な時のみ。
そんなニワトリの卵も、FDAの規則により人間用に販売されることはありません。
卵の殻の色の違いは品種の違い、特別違いはない
白い卵と茶色い卵はニワトリの種類が違うだけで、卵の栄養などに関して変わりはありません。
茶色い卵を産む品種(例 The Rhode Island Red, New Hampshire, Plymouth Rock)は、白い卵を産む品種に比べて若干大きな卵を産み、餌も多く食べるそうです。
茶色い殻の卵が若干割高なのはそのためです。
普通の卵とオーガニックの卵の違いは遺伝子組み換え飼料
アメリカではオーガニック製品が多いのでどのスーパーマーケットにもオーガニックの卵は置いてあり、普通の卵と同様に販売されています。
この2種類の卵の違いは、与えられる飼料と飼育環境です。
オーガニックの卵
オーガニックの卵の採卵鶏は、オーガニック認定された飼料で飼育されます。
化学合成農薬、殺菌剤、除草剤、肥料の使用した餌を用いることは禁止され、遺伝子組み換えの飼料も与えられません。
飼育環境は、ケージフリーかフリーレンジが最低環境です(飼育環境の区分参照)。
オーガニックでない普通の卵
FDAによれば、2020年時点でアメリカで生産される94%の大豆と92%のとうもろこしは遺伝子組み換えであり、多くが家畜や家禽の餌として使われています。実際、アメリカの95%の家畜と家禽は遺伝子組み換えの餌を与えられています。
オーガニックではない普通の卵を産んだニワトリの飼料は、遺伝子組み換えの穀物です。
飼育環境はBattery Cage(バタリーケージ)が基本(飼育環境の区分参照)。ただしカリフォルニアではBattery Cage(バタリーケージ)で飼育されたニワトリの卵の販売は禁止されているので、ケージフリーで飼育されています。
ニワトリの飼育環境の違いによるアメリカの卵の区分
アメリカ(特にカリフォルニア)で販売されている卵には、飼育環境が書いてあることが多いです。
Battery Cage Eggs
消費者が良い印象を受ける言葉ではないのでパッケージに記載されることはありませんが、アメリカで飼育されている大多数の採卵鶏はBattery Cage(バタリーケージ)と呼ばれる多段式で個別の小さなケージで飼育されています。
鶏卵工場のニワトリの飼育環境を思い浮かべた時のそれです。
ただしカリフォルニでは2022年にBattery Cage(バタリーケージ)の卵の販売が禁止されたので、カリフォルニアの卵にはありません。
Cage Free Eggs
Battery Cage(バタリーケージ)の一羽ずつ管理されたケージではなく、屋内の柵で区切られたスペースの中で飼育されたニワトリの卵がCage Free(ケージフリー)。
Battery Cage(バタリーケージ)の一羽分の大きさがA4サイズと同等と考えるとやや良い環境と言えますが、変わらず狭いスペースにニワトリが押し込められた状態と言われています。
カリフォルニアではBattery Cage(バタリーケージ)の卵は販売を禁止されているので、特別記載がない場合はCage Free(ケージフリー)の卵です。
Free Range Eggs
Free Range(フリー レンジ)の採卵鶏は、屋外への出入り口がある場所で飼育されます。ですがニワトリが外へ出れるということではなく、単に農場の人が開け閉めできる何かしらのドアがあることを指します。
ニワトリが外へ出れる場合も外のエリアは狭いことが多く、結局Cage Free(ケージフリー)同様に混雑した場所でニワトリは飼育されています。
Pasture Raised Eggs
Pasture Raised (パスチャー レイズド)は一羽に対して108平方スクエーフィート(約6畳)の放牧地で育てられた採卵鶏の卵。日中は屋外で自由に過ごし、夜は屋内で過ごすことが多いです。
草地の芝や虫やみみずを餌とし(環境の変動などによって追加の飼料が与えられることもある)、動き回ることでニワトリの運動量も上がるので、普通の卵に比べて栄養価も上がります。
2003年のペンシルベニア大学の研究によれば、普通の卵に比べてオメガ3脂肪酸を2倍、ビタミンDを3倍、ビタミンEを4倍、ベータカロテンを7倍含んでいることがわかっています(→参考)。
餌が自然のものなのでオーガニックの認証マークがなくとも、栄養価と倫理的観点からも、Pasture Raised (パスチャー レイズド)がオーガニックの卵よりもいいと言われています。
オーガニックのPasture Raised (パスチャー レイズド)もあるので、オーガニックが良い方はOrganicのPasture Raised (パスチャー レイズド)をどうぞ。
ニワトリに与えられる餌の違いによるアメリカの卵の区分
オメガ3など、栄養価が強化された卵
アメリカの卵には特定の栄養素、特にオメガ3(ビタミンD、ビタミンEなど)を増やすために、フラックスシードや海藻、フィッシュオイルを餌として与えて飼育したものがあります。
上の2枚の写真はどちらもTrader Joe’s(トレーダージョーズ)の卵。
左のTrader Joe’s(トレーダージョーズ)Dark Yolks Eggs (ダーク ヨーク エッグズ)は、通常の卵に比べてビタミンEが5倍、葉酸(Folic Acid)が3倍に強化されています。通常は30mgと言われているオメガ3は225mg含んでいます。
右のTrader Joe’s(トレーダージョーズ)Organic Free Range Plus Omega 3 Eggs(オーガニック フリー レインジ プラス オメガ 3 エッグズ)は、オメガ3を強化した卵。225mgのオメガ3と、75mgのDHA(通常30mg)を含みます。
Vegetarian Feed
Vegetarian FeedやVeg-A-Fedは、ベジタリアンの餌のみで飼育されたニワトリの卵。
メーカーのサイトによれば、ベジタリアンの餌で飼育されたニワトリは(*卵ではない)動物性コレステロールが減少し、動物性の餌を食べることで発生する病気のリスクを排除することができる。とありました。
ただ本来ニワトリは虫やミミズを食べる雑食の動物。Vegetarian FeedやVeg-A-Fedの表記は、屋内で育てられたニワトリの卵を表していると書いているサイトもありました。(参照→TIME; A Guide to What Kind of Eggs You Should Buy)
Soy Free, Corn Free
最近目にするようになったパッケージにSoy Free、Corn Freeと書かれた卵。それぞれ大豆ととうもろこしを餌として与えていないニワトリの卵です。
メーカーの説明によれば、卵アレルギーの人は卵にアレルギーがあるよりも大豆にアレルギーを持ち、ニワトリが餌として食べた大豆に反応していることがあるそうで、そんな方に向けた卵だそうです。
また大豆を食べていないニワトリの卵はオメガ3も豊富になるメリットがあるそうです。
アメリカで最近目にする新しいタイプの卵
アメリカで一般的なわけではないけれど、最近見かけるようになった新しいタイプの卵です。
Non-GMO Eggs
Whole Foods(ホールフーズ)の365 Outdoor Access Large Brown Eggs(365 アウトドア アクセス ラージ ブラウン エッグ)のパッケージには、非遺伝子組み換え食品の認証マークNon-GMOマークがありました。
ニワトリに与えられる飼料はオーガニックではないけれど、遺伝子組み換えの餌は与えられていないニワトリの卵です。
・WFのOutdoor Accessとは
Whole Foods(ホールフーズ)には独自のガイドラインがあります。
365 Outdoor Access Large Brown Eggs(365 アウトドア アクセス ラージ ブラウン エッグ)のOutdoor Accessとは、屋内と同等の広さの屋外スペースがあり、屋外と屋内を簡単に行き来できるような出入り口と屋外での水飲み場があること。
屋外に設置された日除けは、ニワトリが何かの時に避難できるようニワトリ小屋から見えるような位置に設置し、全体の25%のニワトリを収容する広さがあること。
365 Outdoor Access Large Brown Eggs(365 アウトドア アクセス ラージ ブラウン エッグ)は、この環境下で育てられたニワトリの卵です。
Regenerative Organic Eggs
Regenerative Organic(リジェネラティブ・オーガニック)とは環境再生型農業や環境保全型農業とも訳される、環境に配慮した農業形態のこと。
農林水産省によれば”農業の持つ物質循環機能を生かし、生産性との調和などに留意しつつ、土づくり等を通じて化学肥料、農薬の使用等による環境負荷の軽減に配慮した持続的な農業”と定義されていました。
(パタゴニアの日本語の説明がわかりやすかったです→Patagonia; リジェネラティブ・オーガニックとは?)
パッケージの左上のRegenerative Organic認証マークは、設立にパタゴニアやDr.ブロナーズが関わった団体のマーク。
USDAオーガニック認証を最低基準とし、土壌と土地の健康、農家と労働者の公正(フェアトレード)、動物福祉全てを満たした商品のみ取得可能なマークです。
USDAのオーガニック認証マークの一歩先をいく卵です。
Humane Eggs
卵の生産過程でニワトリが人道的に扱われたという認証がついた卵です。
認証団体はいくつかあり、それぞれ「人道的」とする内容が若干異なりますが、American Humane Certified、Certified Humane、Animal Welfare Approvedが有名です。
こちらもUSDAのオーガニック認証マークの一歩先をいく卵です。
(認証マークの若干の違いがわかる表(英語)→ASPCA; Understanding Egg Labels)
番外編-Pasteurized Eggs
放牧されて育てられたPasture Raised (パスチャー レイズド)の卵とよく似た表記に、Pasteurized (パスチャーライズド)の卵がありますが、この2つは全くの別物。
Pasteurizedとは低温殺菌されたという意味です。
在米の方で、生食用にPasteurizedの卵を購入されている方を時々見かけますが、私は昔に日系スーパーマーケットで購入した以来、買ったことがありません。
アメリカでの卵の選び方、我が家の場合
我が家はTrader Joe’s(トレーダージョーズ)で卵を購入しています。
理想はOrganic Pasture Raised Large Brown Eggs(オーガニック パスチャ レズド ラージ ブラウン エッグズ)ですが、こちらはご褒美卵。
実際に購入しているのは上のDozen Organic Free Range Eggs (オーガニック フリーレインジ エッグズ)です。
最近家そばの店舗にはPasture Raised Large Brown Eggs(パスチャ レズド ラージ ブラウン エッグズ)が全然売っていないこともあって。
我が家が卵選びで何よりも優先しているのは、遺伝子組み換えの飼料を食べていないニワトリの卵であること。我が家の卵の消費量が多いので重視しています。
その次に飼育環境。グレードと栄養素の強化は全く気にせず、サイズもラージサイズ以上であればいいと思っています。
色々な卵の区分があります。迷ったら自分の最優先事項を決めましょう。
例えば値段。例えば栄養価。例えば飼育環境。例えば食の安全性。妊婦さんであれば葉酸が入っている卵を選ぶとか。
一番の優先事項を決めると、自分にちょうどいい卵を選ぶことができます。
アメリカの卵、グレードと種類を知った後でどれを選ぶ?
最近卵をはじめ食品のとこを改めて考える機会があり、自分の中の曖昧だった情報を精査。色々調べてみたら、知らなかったり、間違って理解していたことがありました。
知って選ぶのと、知らずになんとなくで選ぶのは違います。知った上で自分の意思で選びたい。
普通の卵よりもオーガニックの卵、オーニックの卵よりもパスチャーレイズドの卵がいいけれど、それぞれ高価になります。
アメリカの卵の品質と特徴を理解した上で、お値段とのバランスを見て、自分のちょうどいい卵を選びましょう。
お店によっても値段は違うので、そんなところも吟味しながらね。(ちなみにTrader Joe’s(トレーダージョーズ)は他のお店と同品質のものを比べると、やっぱお手頃です)
本日は長文!最後までありがとうございました!
関連記事
参照
FDA; GMO Crops and Food for Animals
USDA; What does natural meat and poultry mean?
NBC Washington; Organic, Free Range or Cage-Free? Egg Labels Explained
Illinois Department of Agriculture; Egg Carton Labeling Terms
Eater; What’s the Difference Between Free-Range, Cage-Free, and Pasture-Raised Eggs?
Michelin; Which Type of Egg Is Best?
Wikipedia; バタリーケージ
Time; A Guide to What Kind of Eggs You Should Buy
Chino Valley; WHAT IS A “VEG-A-FED” EGG?
Certified Human; Article explains difference between pasture-raised and free-range eggs
USDA; FoodData Central Search Results, Egg, whole, raw, fresh
USDA; Question: What is USDA grading service?
USDA; What are the egg grades?
Whole Foods Market; Our Standard for Eggs: Beyond Cage-Free
New Barn Organic; REGENERATIVE ORGANIC PASTURE-RAISED EGGS
ASPCA; Understanding Egg Labels
Sauder’s Egg; EVERYTHING YOU NEED TO KNOW ABOUT THE EGG GRADING SYSTEM